インドのヴィデーハ国の王妃は、六牙の白象の夢を見た。
王妃は、その象牙をぜひ自分のものにしたいと思い、王にその牙を手に入れたいと願った。
王妃を愛する王は、この無理な願いを退けることができず、このような象を知る者があれば届けよ、
と賞金をつけて国中に触れ出した。ヒマラヤ山の奥に六牙の象がいた。
この象は仏になる修行をしていたのであるが、あるときひとりの猟師の危険から救ってやった。
ようやく国に帰ることのできたこの猟師は、この触れを見、賞金に眼がくらみ、恩を忘れて、六牙の象を殺そうと山へ向かっていった。
猟師はこの象が仏に成るための修行をしていたので、象を安心させるために袈裟をかけて出家の姿になった。
そして山に入って象に近づき、象が心を許しているさまを見すまして毒矢を放った。
激しい毒矢に射られて死期の近いことを知った象は、猟師の罪をとがめようともせずに、
かえってその煩悩の過ちを哀れみ、猟師をその四つの足の間にいれて、報復しようとする大勢の仲間の象から守り、
さらに猟師がこの危険をおかすに至ったわけを尋ねて、彼が六牙を求めるためであることを知り、
自ら牙を大木に打ちつけて折り、彼にこれを与えた。白象は、「この布施行によって仏道修行を成就した。
わたしは仏国に生まれるであろう。やがて仏と成ったら、
まず、あなたの心の中にある貪り・怒り・愚かさという三つの毒矢を抜き去るであろう。」と誓った。
参考資料 仏教聖典
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